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奈良市の消化器内科クリニック。胃カメラ(経鼻内視鏡)と大腸カメラは、まえかわ医院へお任せください。


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<12月> 新型コロナの治療
 今年も残すところあとわずかになりましたが、コロナに始まりコロナに終わる、そんな1年だったような気がします。GoToキャンペーンを皮切りにコロナの新規患者数は過去最大となり、現在は第3波の真っただ中といったところです。新規患者数の増加に伴い重症者も徐々に増えていますが、新型コロナの治療は現在どうなっているのでしょうか?
 第1波の時に比べると新型コロナの治療経験が豊富になり、治療方法もある程度確立された感じがします。基礎疾患のある人や高齢者など重症化リスクが高い症例には、抗ウイルス薬のアビガンを早めに投与します。この薬は体内でウイルスが増えるのを抑制し、症状を軽減して陰性になるまでの日数を短縮できています。酸素吸入が必要な中等症になると、ステロイドホルモンのデキサメタゾンを早めに投与します。新型コロナウイルスは、ウイルスの増殖を防ぐ働きをするサイトカインが正常な細胞も傷つけてしまうサイトカインストーム、つまり免疫暴走を起こす場合があります。その結果、肺や腎臓に機能障害を来たすことがあり、デキサメタゾンはそれを抑える働きが期待されます。人工呼吸器が必要となる重症の段階では、抗ウイルス薬のレムデシビルを投与します。またこれまでは人工呼吸器を使ったような症例に、ネーザルハイフローという鼻腔から大量の酸素を送る装置を使うことが増えてきました。人工呼吸器はチューブを気管に入れるので二次感染を起こす危険性があり、本人も意識がなくなって負担が大きいのですが、ネーザルハイフローでは意識があって会話や食事も可能です。もっとも重症の呼吸不全や循環不全ではECMO(人工肺とポンプを用いた体外循環による治療)が使用されます。全国に1400台、奈良県には20台のECMOが高次医療機関に配備されています。また、新型コロナウイルスの合併症として血栓症が知られています。血液検査で血栓の数値が上がっていたり、画像検査で血栓が疑われたりという症例では、血栓ができにくくする抗血栓薬を早めに投与するようになりました。他にもマラリア治療薬であるクロロキン、喘息吸入薬のオルベスコ、寄生虫治療薬のイベルメクチンなども効果が期待されています。来年にはワクチンの接種も可能となる見通しです。まだまだコロナがなくなることはないでしょうが、なんとか共存していくしかないと思います。それではみなさん、元気で新しい年を迎えましょう!



<11月> 新型コロナとインフルエンザ

 日が短くなって朝晩がずいぶんと冷え込むようになってきました。さて今年は秋から冬にかけての新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行が懸念されています。インフルエンザワクチンの接種も例年より早く始められ、すでに多くの方が受けられていることと思います。新型コロナウイルスとインフルエンザは発熱や頭痛、咳など症状がよく似ているため、日本感染症学会はインフルエンザの検査を行う場合には新型コロナウイルス検査を同時に行うことを推奨しています。
 新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの違いについてですが、インフルエンザの潜伏期間は1-2日で、コロナは1-14日(平均5-6日)とやや長め。新型コロナは味や臭いが分からなくなることが多い。高熱が出るのはインフルエンザの方が多い。新型コロナでは無症状者も多い一方で、しばしば重症化がみられるというのが特徴です。致死率はインフルエンザ0.1%対し、新型コロナが3-4%となっています。なおインフルエンザと新型コロナの同時感染も、海外および国内で少数ながら報告されています。インフルエンザと新型コロナウイルスの両方に対して、手洗いやうがい、マスクの着用、密をなるべく避けることが予防となります。現在は新型コロナに対する意識が高く感染対策が浸透しているため、今シーズンはインフルエンザが少なくなるかもしれません。しかし気を緩めずにしっかりと風邪予防していきましょう!



<10月> コロナに負けない免疫力を
 ようやく暑さも過ぎ去り、涼しい毎日がやってきました。新型コロナの第2波はピークを越えましたが、1日に何百人もの新規感染者が出ています。いまだにワクチンは完成しておらず、コロナに対抗するには十分な予防策と自身の免疫力に頼るしかありません。

 さて人間には「自然免疫」と「獲得免疫」という2つの免疫システムが備わっています。「自然免疫」は生まれつき備わったもので、白血球の中のNK細胞(ナチュラルキラー細胞)がその代表です。NK細胞は体内で生じる老廃細胞やガン細胞、ウイルスに感染した細胞をいち早く見つけ出して排除してくれます。ほかにも白血球の一種である好中球やマクロファージ(単球)が自然免疫として働きます。一方で「獲得免疫」は病原体が体内に侵入した後、またはワクチンを接種することによって誘導される免疫です。白血球の中のB細胞が抗体を作り出して細菌やウイルスを叩き、キラーT細胞が残りを全滅させます。これは自然免疫に比べて強力ですが、抗体が作られるのには時間がかかります。日本人の抗体保有率が0.1%ほどであることを考えると、新型コロナにかかっても軽症な人、かかりにくい人というのは、自然免疫
NK細胞)がウイルスを初期段階で排除している可能性が考えられますNK細胞の働きには個人差があり、年齢と共に下がっていきます。NK細胞を元気にするためには、①睡眠をしっかりとる、規則正しい生活を送る ②腸内環境を整える ③ストレスや悲しみを避ける、笑う、前向きな思考、瞑想を行う ④日光浴やリズム運動を行う(激しい運動は逆効果)などが挙げられます。免疫細胞の70%は腸に存在するので、腸内環境を保つことは特に重要かと思われます。乳酸菌や発酵食品をしっかり取ってバランスのいい食生活を心がけましょう。それでは、コロナに負けない免疫力を!


<9月> 潰瘍性大腸炎とは?
 828日、安倍首相が退陣の声明を出しました。201212月の第2次内閣発足から約7年半。意欲的だった憲法改正の道筋をつけられず、新型コロナウイルス対策では迷走を繰り返しました。817日に慶応大病院を受診した際に体調不良説がささやかれていましたが、やはり持病の潰瘍性大腸炎が悪化したようです。安倍首相は2007年の第1次内閣時も潰瘍性大腸炎の悪化で退陣しています。この潰瘍性大腸炎とはいったいどのような病気なのでしょうか?
 潰瘍性大腸炎は原因不明の炎症性腸疾患(IBD)です。
本邦における指定難病(特定疾患)の中では最も患者数が多く、約16万人が登録されています。10歳~30歳が発症のピークですが、小児から高齢者まで幅広い年代で発症がみられます。潰瘍性大腸炎は遺伝的な要因や環境要因などが複雑に絡み合い、免疫システムが自分自身の大腸粘膜を攻撃することで大腸の炎症を引き起こします。炎症がひどくなると潰瘍を形成し、腹痛・発熱・下痢・血便が続くようになります。炎症が広範囲で長期にわたるほど大腸癌のリスクも高まります。診断はおもに大腸カメラによって行われます。潰瘍性大腸炎と診断されると、まずは症状がない状態「寛解」を目指して寛解導入療法を行います。寛解後には寛解維持療法を長期間継続することで、再び症状が現れる「再燃」を防ぎます。治療薬は5-ASA製剤が基本となり、寛解導入から維持まで使われます。活動期の炎症を抑えるのにはステロイドが有効で、寛解導入に用います。この2つでコントロール可能なケースが約半数です。残り半数では免疫抑制剤や生物学的製剤が必要となってきますが、新薬の開発によって治療の選択肢が大幅に増えています。他にもGMA(顆粒球吸着療法)やLCAP(白血球除去療法)が難治例に有効です。それでもコントロールできない場合、大出血や穿孔、中毒性巨大結腸症、癌化例では最終手段として手術(大腸全摘出)の適応となります。疾患の経過としては、初回発作型(1回だけで終わる)が20%、再燃寛解型(繰り返す)が50%、慢性持続型(症状が続く)が29%、急性電撃型(初回で重症化)が1%です。潰瘍性大腸炎を完治させる治療法はありませんが、再燃を防ぎ寛解の状態をより長く保つことで、通常の生活を送りながら付き合っていくことができる病気です。寿命も健康な人とほぼ変わりません。便に血が混じる、下痢が続くなどの方は、一度大腸カメラを受けてみましょう。


<8月> 新型コロナ、第2波到来
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25日に緊急事態宣言が解除された後、ようやく通常の生活が戻ってくるように思えました。しかししばらくすると再び歌舞伎町など夜の繁華街を中心にクラスターが発生し、7月に入ると東京の1日あたりの新規発症者数は連日100人を超えるようになりました。感染の波は大阪や福岡など大都市へと広がり、地方にも押し寄せています。
 一体なぜ、夜の繁華街はクラスターになりやすいのでしょうか?それは濃厚接触の機会が非常に多いために他なりません。濃厚接触とは感染者の1m以内、必要な感染予防策なしで、15分以上の接触とされています。不特定多数が換気の悪い室内に集まり、マスクをせずに飛沫を飛ばしての会話、身体的接触やグラスの回し飲み。ホストクラブやキャバクラなどがコロナ感染の温床となるのは自明の理です。一時期やり玉に挙げられたパチンコ店ではほぼ全員がマスクをして間隔を十分開けているため、クラスターは発生していません。むしろマスクを外す飲食店、温泉やプール、密になる満員電車の方がリスクは高いかもしれません。病院ではどうでしょうか?医師と患者さんがお互いにマスクをした状態で通常の診察を行う場合、濃厚接触には当たりません。患者さんのマスクを外して鼻腔からPCRや抗原検査の検体を採取する場合、飛沫対策としてマスクの他に手袋とゴーグルやフェイスガード、防護服の着用が必要となります。人工呼吸器をつけるための挿管処置などではN95マスクが必要です。やはりメインとなるのは飛沫感染ですので、お互いにマスクをするというのがもっとも重要だと考えます。しかし夏はマスクで熱中症になる危険性もありますので、1人で屋外でのウォーキングや車の運転をするような場合にはマスクを外して下さい。またアルコールでの手指消毒のやりすぎは手肌が荒れて逆効果となりますので、十分量の流水で手洗いをするようにしましょう。当分、夜の繁華街は避けた方が賢明ですね。



<7月> 新型コロナウイルスの検査
 新型コロナウイルスの検査には、大きく分けてPCR検査、抗原検査、抗体検査の3つがあります。まずPCR検査ですが、コロナウイルスのRNA(核酸、遺伝子)を増幅させて検出する検査です。検体は喀痰・鼻咽頭ぬぐい液・唾液で、結果が出るのに4-6時間(+検査機関への搬送時間)かかります。しかし鋭敏なPCR検査でも症状発現から3日くらいまでは60-70%の検出率であり、全例が陽性になるまでは5日以上かかるようです。検体によっても検出率が異なり、高い順に喀痰>鼻咽頭ぬぐい液≧唾液です。唾液は検体採取時に飛沫感染を防ぐメリットがありますが、発症から9日以内のものに限られます。
 次に抗原検査ですが、ウイルスの身体の一部であるタンパク質(抗原)を検出します。これはPCR検査に比べて安い、早い(30分程度)というメリットがあります。富士レビオ社の迅速抗原検査キット「エスプラインSARS-CoV-2」は鼻咽頭ぬぐい液を用います。同社の「ルミパルス SARS-CoV-2 Ag」は唾液での定量検査が可能ですが、専用の大型検査装置が必要となります。抗原検査はより多くのウイルス量が必要とされるため、PCR検査と比べて感度は劣ります。また無症状者ではウイルス量が少ないので適しません。しかし発症から2-9日目の有症状者ではPCR検査とほぼ一致すると報告されており、厚生省のガイドライン改訂によって抗原検査が陰性であれば追加のPCR検査は不要となりました。感染が強く疑われる場合、発症10日目以降では追加のPCR検査が必要です。
 最後に抗体検査ですが、コロナウイルスに対して体内で作られる免疫グロブリン(IgM抗体、IgG抗体)を測定します。PCR検査や抗原検査と違って保険適応外です。IgM抗体は感染直後より上昇し始め、7日目くらいでピークになり1ヶ月ほどで消えます。一方IgG抗体は7日目くらいから上昇し始め1ヶ月くらいでピークとなり、長期間持続します。ウイルスの現在の感染はIgM抗体、過去の感染はIgG抗体を調べます。検体は血液を用いますが、検査機関で抗体を測定するのに2-4日かかります。迅速抗体検査キットも出ていますが感度も特異度も十分と言えず、臨床診断ではなく疫学調査に用いられているというのが現状です。抗体の保有率は東京で0.10%、大阪で0.17%、宮城で0.03%と報告されています。欧米と比べて日本での感染者数や重症者数が少ない要因は、抗体保有率の高さではなかったようです。それは自然免疫の差なのか、BCGによる交差免疫の差なのか、生活習慣の違いなのか・・・山中教授の言われるファクターXの正体が気になります


<6月>コロナ疲れ、コロナブルー
 5月25日に全都道府県で新型コロナウイルスに対しての緊急事態宣言が解除されました。しかし第2波の到来も懸念されており、引き続きマスクや手洗い、3密を避ける行動が必要だと思われます。幸い4月の緊急事態宣言以降、不要不急の外出を控えている方が多いと思います。多くの会社でテレワークが進められ、在宅勤務の人も増えました。しかし家でなるべくじっとしているはずなのに、なぜか普段よりも疲れを感じてしまう・・・いわゆる「コロナ疲れ」はなぜ起こるのでしょうか?
 未知のウイルスに対する感染の恐怖や社会経済に対する先行きの見えない不安。外出制限でしたいことができなくなり、家でじっとしているというストレス。このストレスや不安による緊張状態の持続が精神エネルギーを消耗させ、「コロナ疲れ」の原因となっています。対処法としては
TVや新聞、ネットなどのニュースからなるべく離れること。日常生活のリズムを崩さないこと。日光浴をする。自然を感じる時間を大切にする。音楽を聴いてリラックスする。脳内物質セロトニンを補充するためにバナナを食べる。アルコールの過度の摂取を避ける。体操やウォーキングなど体を動かすことです。夜なかなか眠れない、どんなことにも興味や関心を持てない、食欲が落ちてきた(あるいは食べ過ぎてしまう)などの状態に陥っていたら、「コロナ疲れ」から「コロナうつ」・「コロナブルー」に悪化している恐れがあります。これは「アフターコロナ」で緊張が一気に解けると発症することもあり、注意が必要です。手を動かすことは脳に良い刺激を与えます。手芸やペーパークラフト、模型作り、料理などは認知症やうつの改善効果があるといわれます。何が自分をブルーにしている原因なのかを書き出してみる「認知療法」も有効です。症状が重い場合には、医療機関への受診をおすすめします。それではみなさまの心の健康を願って



<5月> 緊急事態宣言
 新型コロナウイルス感染症に対して47日に東京都など7都道府県に緊急事態宣言が発令され、416日には全都道府県が緊急事態宣言の対象となりました。期限は56日でしたが、さらに延長される見通しです。緊急事態宣言によって遊興施設や飲食店などに休業要請が出され、多くの店が休業や時短営業へと追い込まれています。しかし都心の人通りが激減する一方で、郊外のスーパーなどに人が集中してしまうという現象も起きています。中には家族連れや友達同士で外出している人もみられ、3密(密閉・密集・密接)を完全に避けることはできていません。しかし、日本の社会活動や経済をストップするのもそろそろ限界にきています。今後はコロナウイルスとの共存という考え方が必要になってくるでしょう。
 幸いなことに緊急事態宣言以後、新規感染者数は減少へと転じています。現在、日本の累計感染者数は1.4万人、死者数は415人。世界の累計感染者数は310万人で、死者数が22万人。死者数の多い国が上からアメリカ6.0万人、イタリア2.7万人、イギリス2.6万人、スペイン2.4万人、フランス2.4万人です。ドイツは6000人と少ないですが、それでも日本の10倍以上です。なぜこれほどまでに欧米での感染者数・死者数が多いのでしょうか?ウイルスの型の違い。人種の違い。抗体保有率の差。BCG接種率の差。生活習慣や衛生面の差。PCR検査数の差。受けられる医療の差。様々な要因があるかと思われますが、個人的には日本を含めアジアの国々では新型コロナウイルスに対してある程度の免疫力があるのではないかと考えています。台湾は別格として、人口あたりの感染者数と致死率の低さは日本は世界でトップレベルです。PCR検査数が少ないために感染者数を少なく見積もっているとすれば、検査をして母数を増やせば致死率はさらに下がり、日本の致死率の低さは世界トップとなるでしょう。ロックダウンもせず、PCR検査数も少なく、医療資源も潤沢とは言えない日本がこのような状況で済んでいるのは、免疫力というのが一番説得力があるように思えます。とにかく現時点でハッキリしていることは、3密が起こりやすい環境下でクラスターが発生していること。高齢者での死亡率が高いこと。糖尿や肥満、喫煙者、基礎疾患を持つ人間が重症化しやすいことです。引き続き3密(密閉・密集・密接)を避け、マスク・手洗い・うがいを心がけるようにしましょう。



<4月>志村けんさん死去

 日本を代表するお笑いグループ「ザ・ドリフターズ」の志村けんさんが329日、新型コロナウイルス肺炎のため亡くなりました。享年70歳。320日に入院してから10日足らずのことで、あまりにも急な訃報に驚きを隠せません。日本の芸能人の中でコロナウイルス関連の死者は初であり、その愛されるキャラクターと知名度の高さから日本全国に衝撃が走ったといっても過言ではないでしょう。子供の頃、家族でドリフの「8時だョ!全員集合」を見ていたのを覚えています。彼がTVの画面に登場するだけで何となくおかしくて、本当に人を笑わせる天才だったと思います。なぜ志村けんさんが日本人12000万人のうち、新型コロナウイルスによる死亡者50人の中に入ってしまったのか・・・

 世界における新型コロナウイスの感染者数は現在80万人、死者数が4万人を超えようとしています。日本でも東京を中心に増加しており、感染者数が2000人を超えました。死亡者が56人と欧米と比べて少ないのは公衆衛生面の違いだと思われます。日本にはきれいな水が豊富であり、手洗いやうがい、入浴が習慣付いていること。握手やハグ・キスの習慣がないこと。土足で家に上がらないこと。国民皆保険制度の存在も大きいでしょう。しかし4月になって学校が始まると若者から感染が広まる可能性も高く、1か月先には日本もアメリカやイタリア、スペインのようにならないとは限りません。今回の志村けんさんの死は日本人が改めて気を引き締め直す切っ掛けになったのではないでしょうか。世界における新型コロナウイルス感染の収束および、志村けんさんのご冥福をお祈りいたします。



<3月>新型コロナウイルスの脅威
 テレビや新聞、ネットニュースなどで連日取り上げられている新型コロナウイルスですが、201912月に中国の湖北省武漢市を中心に発生し、短期間で世界に広まっています。日本でも奈良で初の感染者が確認された後、全国で感染の報告が相次いでいます。現時点では北海道101人、愛知68人、東京60人、大阪55人、神奈川34人、千葉20人、和歌山12人、京都8人、奈良2人などで、国内の感染者は488人、死亡者が7人です。横浜のクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」の乗船者3711人のうち感染者が696人、死亡者は7人。海外では中国の感染者数が圧倒的に多くて8万人超、死亡者が3097人。ついで韓国、イタリア、イランの順となっています。全世界での感染者が10万人超、死亡者が3474人。2003年のSARSの全世界での死亡者が774人であり、それを大幅に上回る数字です。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、長引く発熱(37.5℃以上)や頭痛、乾いた咳や強い倦怠感などがみられる一方、鼻汁や鼻閉などの上気道症状は比較的少ないようです。初期に味や臭いがしなくなるというケースが多くみられます。一部に嘔吐や腹痛、下痢などの消化器症状もみられます。しかしこれらの症状がない場合や、急激に呼吸困難が出現して短期間で死に至るケースも少なくありません。肺炎は両側性のことが多く、呼吸不全や多臓器不全を起こして死亡します。治癒後に再燃したと思われるケースも報告されています。人から人への感染経路は飛沫感染が主で、エロゾル感染や接触感染もみられます。潜伏期間は1-12日(多くは5-6日)とされています。診断は遺伝子検査(PCR)によって行われ、発症後5日以内に採取した喀痰、咽頭拭い液、血液などを採取して調べます。現在のところ保健所を通して一部の医療機関でのみ可能な検査であり、迅速診断キットの大量生産が待たれます。肺炎の発見にはレントゲン検査やCT検査が有用で、一般的な血液検査なども適宜実施されます。
 治療方法は現時点では確立されておらず、入院の上で対症療法が行われます。抗インフルエンザ薬の「アビガン」や抗HIV治療薬の「カレトラ」が新型コロナウイルス感染症に効果があるとのことで、現在各国で臨床試験が行われています。しかし一番大切なことは予防です。外出の際にはマスクをして、空港や駅、デパートなどの人混みを避けること。バスやタクシー、電車などの密閉空間を避けること。手洗いうがいを励行すること。こまめに水分を取りのどを乾燥させないようにすること。体を冷やさないこと。栄養と睡眠をしっかりとって体力の低下を招かないこと。大切なのは正しく怖がるということです。過度に敏感になることなく、押さえるところをキッチリと押さえるようにしていきましょう。



<2月> 奈良ホテルのカレー缶
 先月、奈良市医師会の新年会に顔を出してきました。場所は恒例のあやめ館です。お世話になった先生や先輩、開業した後輩などに久しぶりに会うことができて有意義な新年会でした。飲み会の後は恒例の抽選会がありまして、特等から5等まで多数の景品が用意されています。その中で特等のRINGBELLカタログギフト10万円分、1等のCoachショルダーバック、2等のBaccaratグラスセット、3等のRYOBI高圧洗浄機、4等のブルゴーニュワインセットあたりを狙っていたのですが、惜しくも全て外れてしまいました。最下位の5等は色々な景品の中から自分で選ぶことができるので、今回は奈良ホテルのカレー缶詰め合わせを選んでみました。ビーフカレーが2種類、クラシックとトロピカルが3缶ずつ入っています。さて、奈良ホテルのメインダイニングルーム「三笠」伝統のお味とは一体・・・クラシックの方はかなり普通でした。甘くもなく辛くもなくスパイシーでもなくコクが深いわけでもなく、個性がないのが個性というか。トロピカルの方は若干甘味がありまだ個性的でした。どちらもかなりドロッとしたタイプで小麦粉が多目に使用されている印象です。奈良に美味いものなしとよく言われますが、奈良を代表するホテルのダイニングとしてはもう少し頑張ってもらいたいところですね。



<1月>健康寿命~フレイルとは?
 明けましておめでとうございます。今年で令和は2年となり、東京オリンピックという一大イベントを迎えようとしています。一方、日本は団塊の世代が高齢化を迎えることでこれまでにない超高齢社会がすぐそこまで迫っています。それに伴う医療経済の負担が懸念され、2022年から75歳以上の方の医療費の負担額を1割から2割へと引き上げるという案が出ています。これは実質70歳以上では全員が2割になるということで、非常に厳しい措置であると言えるでしょう。なるべく大きな病気をせずに最期まで健康でいること、つまり健康寿命がこれまで以上に重要になってくると思われます。

 高齢になるとさまざまな心身の機能が低下し、社会的支援を受けることとなります。20145月に老年医学界がそれまで老衰(frailty)と呼んでいた状態を「フレイル」と呼称するように提言しました。体重減少、筋力低下、疲労感、歩行速度の低下、低活動性5つの特徴のうち3つ以上当てはまるものがフレイルと診断されます。また老衰における変化として「サルコペニア」と呼ばれるものがあり、これは骨格筋の減少のことを表します。診断基準として握力低下(男性26kg未満、女性18kg未満)や歩行速度0.8m/秒以下などが含まれます。ほかにも日本整形外科学会が提唱する「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」という概念もあり、これは骨・関節・筋肉などの運動器障害によって移動能力が低下した状態を指します。フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドローム、骨粗鬆症は互いにオーバーラップする部分もあり、すべてが老化を表すキーワードとなっています。これらの診断や予防、治療についての研究が発展するとともに、健康寿命の延伸へと繋がることを願います。それではこの1年がみなさまにとって良い年でありますように。


まえかわいい 医療法人 前川医院

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